2025/01/28
猫ワクチンは毎年打った方がいい? 猫のワクチンのメリットとデメリットを紹介
皆さんは猫のワクチンについてどれくらい知っていますか?
猫を飼っているご家庭なら、必ず1度はかかりつけの獣医さんから「毎年打ちましょうね」と言われたことがあると思います。
しかしご家族の中には
- 接種する時期を忘れてしまう
- 費用が高い
- 猫が病院に行くのを嫌がる
以上のことから、ワクチン接種について悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
今回はそんな皆さんに、猫にとっての毎年のワクチン接種の必要性をメリット・デメリットという側面から解説いたします。
猫のワクチンについて正しく理解しましょう。
ワクチンを打つメリット
猫のワクチン接種は動物病院で必ずと言っていいほど勧められるものです。
それだけ猫の健康を守るために必要と言われているからですね。
ここでは猫のワクチンを打つメリットについて解説していきます。
感染症の予防ができる
感染症の予防がワクチン接種の最大の目的です。
特に子猫や免疫の低下している状態の猫にとっては命取りになりかねない病気の予防が可能です。一般的によく接種を勧められる猫3種混合ワクチンで予防できる病気の症状や特徴についてご説明します。
パルボウイルス感染症
パルボウイルス感染症は猫汎白血球減少症と呼ばれています。その名の通りこの病気は猫の白血球がどんどん失われていく病気ですね。最初に出る症状には嘔吐下痢、食欲不振などがあり、子猫ではひどい脱水を起こし、亡くなってしまうケースもあります。
治療は輸液や二次感染予防としての抗菌薬投与などの支持療法しかなく、非常に致死率の高い病気です。
カリシウイルス感染症
カリシウイルス感染症は、猫上部気道感染症(いわゆる猫風邪)の原因の一つです。くしゃみや鼻汁、流涙だけでなく、ひどい口内炎ができることもあります。呼吸器症状で匂いを感じづらい、口内炎が痛いなどの症状が食欲不振につながり、子猫では重症になることもあります。
一度感染すると、回復してもウイルスを排出し続けることがあるため、多頭飼育では要注意の疾患です。治療は支持療法がメインです。
ヘルペスウイルス感染症
カリシウイルス感染症と同じく猫上部気道感染症の一因で、猫ウイルス性鼻気管炎とも呼ばれています。症状としては結膜炎や鼻炎が代表的で、時には発熱や口内炎を起こします。
この病気の怖いところは、一度回復しても、免疫力の低下した時に症状が再発するケースがあることです。治療は支持療法だけでなく、抗ウイルス薬を投与することもあります。
定期的に診察を受けるきっかけになる
現在の国際的なガイドラインでは、猫のワクチン接種は1〜3年に一度が推奨されています。
普段のご家族から見て、猫が健康だと病院に行く機会はなかなかなくなってしまいますよね。ワクチン接種のタイミングがあると、健康だと思っていても病院に行く機会が生まれます。毎日見ていたら気がつかないような愛猫の変化、病気のサインに気がつくことができるかもしれません。
ワクチンを打つデメリット
ここまでは猫のワクチン接種により予防可能な病気について解説しました。
ご家族にとっては大事な猫に接種するワクチン、そのデメリットも気になるところですよね。
ワクチン接種のデメリットには何があるのでしょうか。
アレルギー発症の可能性
猫は1万回のワクチン接種につき51.6例程度で、アレルギーを発症すると言われています。猫のアレルギー症状には活動性の低下、接種した部位の皮膚症状だけでなく、嘔吐下痢などの消化器症状などがあります。また、猫のアナフィラキシーショックでは、呼吸が苦しくなったり最悪死亡することもあります。
体質により症状は軽症のものから重症のものまで様々です。重症であれば発症してすぐに治療する必要があるため、接種してしばらくはしっかりと様子を見る必要があります。
接種部位肉腫のリスク
猫のワクチンは皮膚の下に注射します。
1万回のワクチン接種につき1〜4例と非常に稀ではありますが、ワクチンを接種した部位に出来物ができることがあります。
転移率・再発率の高く、放置すれば命に関わることもあります。治療は外科療法だけでなく放射線療法を組み合わせて行うことが多いです。
慢性腎臓病の発生
2016年に発表された論文では、猫のワクチン接種歴を調べてみると、ワクチン接種頻度が高い猫で慢性腎臓病を発症する可能性が報告されました。これはワクチンの成分によるものと考えられています。慢性腎臓病になると、体液のコントロールができなくなり脱水したり、毒素を排出することができず食欲不振になることもあります。
病院に連れて行くストレス
お散歩に行くことが少なく、基本的に家にいることの多い猫にとって病院は、
- 嗅いだことのないさまざまな匂いがする
- 大きな声で吠える犬がいる
- 会ったことのない先生に注射をされたり、体を触られたりする
など、緊張する場所です。
特に警戒心の強い猫にとっては、病院へ行くこと自体が非常に大きなストレスになります。
病院に行く時は、お家や飼い主さんの匂いのするタオルをケージに入れてあげたり、好きなおやつを持って行ってあげるといいかもしれません。
まとめ
猫のワクチン接種についてメリットとデメリットを紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
ワクチンにより恐ろしい病気の予防が可能になる一方で、副反応のリスクやストレスも無視できない問題です。
現在発表されているガイドラインでは個々の感染リスクや飼育環境に基づいて1〜3年に一度の接種が推奨されていますが、可愛い家族のために、獣医師としっかり相談して、どのように予防を行なっていくか、ご家族で納得して決めていきましょう。
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