2025/04/14
犬の白内障と核硬化症の違いとは?|目が白くなったらどっちか獣医師が解説
愛犬が年をとってくると、黒目が白く見えることがよくあります。
「白内障なのかな?」
「いつか目が見えなくなってしまうの?」
と心配になりますよね。
実は、眼が白く見えるからといって全てが白内障とは限りません。
白内障と似ていて眼が白くなる原因として多いのが、核硬化症という状態です。
今回は、白内障と核硬化症の違いや診断方法などを解説します。
白内障と核硬化症では水晶体の異常で眼が白く見える
白内障と核硬化症は、いずれも水晶体が白く濁ることで眼が白くみえます。
水晶体は眼の中にある透明な組織です。
形もはたらきもカメラのレンズと似ており、眼に入る光を屈折してピントを調節しています。
水晶体は眼の中にあるので、白内障や核硬化症になると、黒目の中心部にある瞳孔の奥が白く見えるようになります。
ここからは、白内障と核硬化症について、それぞれどのような状態なのか、そしてどのように診断するのかを解説していきます。
白内障とは
白内障は、水晶体の成分であるタンパク質が変性して硬くなり、水晶体が白く濁った状態です。
人でもよくある病気で、お年寄りの方に多いイメージがありますよね。
犬でも、加齢によって白内障になることはありますが、白内障にはほかにも様々な原因があります。
遺伝的な素因がある場合には、若くても(6歳未満で)発症することがあり、急激に進行してしまうことがあります。
白内障になりやすい犬種として、次の犬種が挙げられます。
- トイプードル
- チワワ
- ヨークシャーテリア
- ミニチュアシュナウザー
- 柴犬
- ボストンテリア
- ゴールデンレトリーバー
- アメリカンコッカースパニエル など
ほかにも、頻繁に眼の周囲をかくことなどによる外傷や、糖尿病などの代謝性疾患、他の眼の疾患が原因となり白内障になってしまうこともありますね。
初期には水晶体の一部に軽度の混濁がみられますが、見た目にはわかりにくく、視力の低下や他の眼の症状もみられません。
進行していくと、水晶体の混濁が広がり、完全に混濁した頃には視覚も失われてしまいます。
重度の白内障では、ぶどう膜炎とよばれる眼球の炎症や、緑内障などの合併症が起きてしまうことがあり、そのような場合には眼の痛みも出てきます。
白内障は残念ながら薬で改善できるものではありません。
進行の程度により治療が変わるので、状態に合った治療を行うことが大切ですね。
初期の白内障では、進行を遅らせるために点眼薬やサプリメントの投薬をします。
進行した白内障を治療するためには、手術が唯一の方法です。
白内障手術では、水晶体の硬くなったタンパクを吸引して人工レンズを挿入します。
手術ができた場合には、視力が回復し、合併症のリスクも手術しない場合に比べて低くなります。
ただし、状態によっては手術をするのが難しかったり、手術をしても合併症を発症してしまうことも少なくありません。
進行した白内障で、手術を行わない場合には、合併症を予防するための点眼薬を使います。
白内障は早期発見ができれば進行を遅らせる点眼やサプリメントでの対策が可能です。
眼が白くなり、視力の低下が起きている段階では、残念ながらかなり進行した白内障になってしまっています。
症状がないうちに、眼の健康診断で白内障になっていないかみてもらうのが良いですね。
核硬化症とは
核硬化症は、水晶体の中心部が硬くなり白くみえる状態です。
病気というよりは老化現象のひとつと考えられていて、歳をとってきた犬にみられます。
視力への影響はほとんどなく、進行して問題を起こすこともありません。
治療も特に必要ないため、核硬化症であればそのまま様子をみていて大丈夫です。
白内障と核硬化症の診断方法
白内障と核硬化症では、症状や治療に大きな差があることがおわかりいただけたかと思います。
見た目が似ているため、動物病院で検査をしてしっかりと診断することが大切です。
水晶体を詳しく診るときには、瞳孔を開いて眼の奥を見やすくするために、事前に点眼の処置を行います。
瞳孔が十分に開いたら、スリットランプという機器を使って検査をします。
スリットランプは眼に細い光をあてる機械です。
眼の奥にスリットランプの光をあてて、水晶体の光の通り方を確認します。
眼が白く見えるほど進行した白内障では、水晶体全体が混濁していて、スリットランプの光は水晶体を通過できません。
それに対し、核硬化症の水晶体はスリットランプの光が通過するので、白内障と区別することができるのです。
スリットランプを用いた眼の検査では、眼の傷や炎症などの異常がないか、水晶体以外の眼の状況もしっかりと確認します。
白内障の場合には、合併症や全身状態を確認するため、眼の追加検査や血液検査などを行うこともあります。
まとめ
白内障と核硬化症は、いずれも水晶体の異常によって眼が白くみえます。
見た目は似ていますが、症状や治療の必要性が大きく異なるので、動物病院でしっかりと検査をして診断することが大切です。
愛犬の眼の白濁が気になる方は、お気軽に当院までご相談ください。
奈良県生駒市の動物病院
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