2024/01/16
猫の慢性腎臓病
猫ちゃんの健康を守るためには、病気に対する正しい理解が不可欠です。
特に慢性腎臓病は、高齢の猫ちゃんに多く発生し、早期発見と適切な治療が重要です。
そこで今回は、慢性腎臓病はどういうものなのか、どういう治療をしたらいいのか、早期発見のためにしたほうがいいことを解説します。
◾️目次
慢性腎臓病ってどんな病気?
慢性腎臓病(CKD)は、猫ちゃんの腎臓が徐々に機能を失っていく病気です。
腎臓は体内の老廃物を濾過(ろか)し、尿として排出する役割を担います。
CKDが進行すると、この機能が低下し、体内に老廃物が蓄積されてしまいます。
この病気の厄介な点は、初期段階では症状がほとんど見られないため、発見が遅れることが多い点です。
慢性腎臓病のステージ分類と血液検査
CKDのステージは血液検査で測定するクレアチニン(Cre)という値によって以下のように分類されます。
– ステージ1:クレアチニン <1.6 mg/dL、軽度の腎機能低下、特に明らかな症状は見られないことが多い
– ステージ2:クレアチニン 1.6 – 2.8 mg/dL、中等度の腎機能低下、飲水量の増加や多尿が見られることがある。
– ステージ3:クレアチニン 2.9 – 5.0 mg/dL、重度の腎機能低下、食欲不振、体重減少、嘔吐などの症状が現れることが多い。
– ステージ4:クレアチニン >5.0 mg/dL、末期の腎機能障害、重篤な症状が見られ、管理が難しくなる。
血液検査では、腎機能の低下を示すクレアチニンの他に、BUN、SDMA(対称ジメチルアルギニン)の測定が重要です。
SDMAは腎機能の変化を早期に検出する新しいマーカーのため、近年ではCKDステージ1などの初期病態の検出に測定されています。
慢性腎臓病の治療
CKDの治療は、病気の進行を遅らせたり、元気や食欲などの猫の生活の質を維持することを目的とします。
・食事療法
腎臓に負担をかけない食事を与えます。
塩分やリンやタンパク質が過剰に摂取されると、腎臓に障害を与え、病気の進行を早める可能性があるため、この3つを制限した食事を与えるのが良いとされています。
市販されている食事ではこれらを適切に制限している食事は少ないので、動物病院で処方される療法食を与えるのが望ましいです。
・投薬
高血圧や貧血の治療、腎臓の機能をサポートする薬が処方されることがあります。
それぞれ闇雲に投与したらいいというものではなく、状態に合わせて必要な薬が選択されます。
・点滴治療
脱水状態の改善や体内の老廃物の排出を助けるために行われます。
重症度が高ければ高いほど行われることが多いです。
慢性腎臓病の早期発見とその重要性
早期発見は、CKDの管理において非常に重要です。
以下のような症状に注意するようにしましょう。
– 飲水量の増加
– 尿量の増加
– 体重の減少
– 食欲不振
– 嘔吐
定期的な健康診断では、尿検査と血液検査を通じて、CKDの早期発見を目指していきます。
早期発見治療ができれば猫ちゃんの寿命や生活の質(QOL)はまるで変わってきます。
もし猫ちゃんが高齢であれば3ヶ月〜6ヶ月に1回の健康診断を行うようにしましょう。
まとめ
慢性腎臓病は多くの猫ちゃんにとって重大な病気となりますが、適切な治療によって、愛猫の生活の質を高め、より長く一緒に過ごすことが可能です。
日頃からの観察と定期的な健康診断が、猫の健康を守る最初のステップになります。
以下のことをやってみましょう。
・猫の行動に注意を払う
猫は病気を隠す習性があるため、日常の行動の変化に注意深く目を向けることが重要です。
特に飲水量や尿の量の変化は、初期のCKDを示唆するサインの可能性があります。
・定期的な健康診断
定期的な健康診断は、CKDのような慢性疾患の早期発見に欠かせません。
特に高齢の猫では、3ヶ月〜6ヶ月に1回の健康診断を推奨します。
・飼い主としての対応
慢性腎臓病の診断を受けた場合、獣医師の指導に従い、定期的なフォローアップを行うことが重要です。
食事療法や薬の管理、点滴治療など、飼い主様の協力が不可欠となります。
慢性腎臓病は治療が難しい病気ですが、愛猫との時間を最大限に楽しむためにも、適切な知識と対策を講じることが大切です。
愛猫の健康を守るために、日々の観察と適切なケアを心がけましょう。
慢性腎臓病に関してお困りの場合は当院までお気軽にご相談ください。
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