2024/01/29
犬と猫の網膜剥離について
犬や猫が失明をしてしまう原因は様々ですが、網膜が剥離する「網膜剥離」はその一例です。一度失われた視力を回復させることは困難ですので、早期に目の異常に気づくことが重要です。
網膜剥離は初期症状が出にくいため、普段の様子のみでは発見が難しい目の病気です。
今回は犬と猫の網膜剥離について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
原因
まず、網膜とは目の奥(眼底)にある組織で、受け取った光の情報を視神経から脳に伝える役目をしています。
網膜剥離はこの網膜が脈絡膜から剥がれ、栄養を得られなくなって障害を受け、早くに治療しないと永久に失明してしまう病気です。
また、網膜剥離には、網膜に穴や裂け目ができる裂孔原性と、穴や裂け目ができない非裂孔原性があります。
裂孔原性網膜剥離はパグ、シー・ズー、トイ・プードルなどの犬種でしばしば見られます。非裂孔原性網膜剥離には、下記のように滲出性と牽引性があります。
・滲出性網膜剥離
液体が網膜の下に溜まることで起こるもので、高血圧、ぶどう膜炎など目の炎症、白内障、緑内障、水晶体脱臼、腫瘍などが原因になります。
このため、慢性腎不全、甲状腺機能亢進症、副腎皮質機能亢進症、糖尿病、肥大型心筋症、僧帽弁閉鎖不全症など、高血圧状態に陥る病気は、すべて網膜剥離の原因とも考えられます。
こうした病気は高齢の犬猫に多く、特に猫では高血圧による網膜剥離が多く発生しています。
・牽引性網膜剥離
外傷などが原因で網膜が引っ張られることで起こります。
犬では、頭をぶんぶん振る行為が続くと、繰り返しの衝撃から牽引性の網膜剥離が起こるケースも見られています。
ほかにも、網膜形成不全やコリーアイ症候群など先天性(生まれつき)のものや、白内障手術の合併症などの医原性も時々見られます。
症状
「剥離」と聞くと痛そうに聞こえるかもしれませんが、網膜剥離は痛みを伴わないため初期の頃はほとんど症状がありません。
進行により、物にぶつかりやすくなる、動きたがらない、散歩を嫌うなどといった視力障害の症状が見られますが、片目だけが剥離している場合は日常生活に支障がないため、飼い主様が異常に気づいたときにはすでに視力が失われているケースもよくあります。
診断方法
網膜剥離は、ほとんどの場合、眼底検査で見つけられますが、わかりにくい場合は超音波検査を行うこともあります。
また、眼科検査や血液検査、レントゲン検査などを行い、網膜剥離の原因となる病気がないかを調べます。
治療方法
原因となる病気がわかっている場合は、原因に対する治療を行います。
例えば高血圧が原因であれば降圧剤を投与するとともに、高血圧の原因となる病気に対する治療を行います。
また、ぶどう膜炎など目の病気が原因の場合は、点眼薬などで治療を行います。
レーザーで剥離してしまった網膜を再度くっつける方法もあり、これには全身麻酔が必要です。また、硝子体手術という専門的な眼科手術もあります。
いずれの方法であっても、発見が早ければ早いほど視力の回復が望めますので、早期発見・早期治療が重要です。
予防法やご家庭での注意点
網膜剥離は様々な病気が原因となって起こるため、「これをしておけば網膜剥離にならない」という予防法はありません。
ただし、網膜剥離の原因になる全身の病気には、治療が遅れると視力だけでなく命を失うこともありますので、注意が必要です。
犬や猫は「ちょっと調子が悪い」程度では症状を表に出さないため、元気そうに見えても網膜剥離をはじめ様々な病気が隠れていることがあります。
どの病気にも言えますが、早期発見・早期治療は予後を左右する上で重要になりますので、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。
まとめ
網膜剥離は痛みを伴わないため、初期に発見することが難しい病気ですが、治療が遅れると永久に視力を失ってしまうこともあります。
反対に、治療が早ければ早いほど視力の回復が望めますので、普段から健康状態にはよく注意して、眼科検査を含め定期的な健康診断を行うことで、早期発見・治療を心がけましょう。
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