2024/02/26
犬の腸の腫瘍の実際の症例
犬の腫瘍にはさまざまなものがあり、中でも高齢犬の場合は、腸に腫瘍ができることは多いと言われています。
今回は犬で腸に腫瘍が発生し、貧血により命の危機に瀕したものの、外科手術を行うことで救命できた症例をご紹介します。
■目次
1.犬の腸の腫瘍とは
2.貧血を伴う犬の腸の腫瘍に対して手術を行った症例
3.まとめ
犬の腸の腫瘍とは
犬の腸の腫瘍には良性の腫瘍から悪性の腫瘍までさまざまなものがあります。
犬で発生しやすい腫瘍は腸腺癌やリンパ腫などですね。
腸に腫瘍ができると以下のような症状が出ます。
・嘔吐
腸の中に腫瘍ができて、食事などの腸の内容物がうまく流れなくなってしまうと、嘔吐が起こります。
腫瘍によって完全に腸の内容物が流れなくなった状態のことを腸閉塞と言います。
・下痢
腸の中に腫瘍ができることで本来の腸の役割を果たすことができず、便の中の水分が増えると、下痢をしてしまうことがあります。
中には腫瘍から出血し、血便が出てしまうこともあります。
・食欲不振、体重減少
腸の中の腫瘍により吐き気が出てしまい、食欲が失われることがあります。
また、本来の役割である栄養の吸収ができなくなることによって、ある程度食べているのに痩せていくという症状が出ることがあります。
今回ご紹介する症例はこの中でも下痢、血便を引き起こし、各種検査から腸の腫瘍からの出血が疑われ、外科手術を行い救命したワンちゃんです。
貧血を伴う犬の腸の腫瘍に対して手術を行った症例
症例は13歳のマルチーズの去勢雄で、血便が出ていてぐったりしているとのことで来院されました。
血液検査をしてみると貧血を表す指標のPCVが11.8%(正常値 37.3〜61.7%)と重度な貧血を呈していました。
超音波検査で腹部を検査してみたところ腸に腫瘤状の病変があったため、腸内の腫瘤からの出血により血便が発生し、貧血を起こしたことが疑われました。
空回腸に腫瘍が疑われる箇所があることがわかります。
状態の悪さから緊急性があると判断し、同居犬からの輸血を行い、そのまま緊急手術を開始しました。
ここからは手術の画像が出ますので、苦手な方はご遠慮ください
手術は全身麻酔によって行われました。
腹部を切開して腸を観察すると、腸の一部に膨らみがあり,そこでの腫瘍の発生が疑われました。
膨らんでいる場所が腫瘍の疑われる箇所です。※苦手の方のため色彩調整しています。
腸の状態を確認した後、この腫瘍が疑われた場所を切除し、腸同士を吻合(繋ぎ合わせる)しました。
切除した腸が以下の画像です。
腸の中に腫瘍があるのがわかります。※苦手の方のため色彩調整しています。
この腸を病理組織検査すると乳頭上皮種という良性腫瘍で、この腫瘍から出血し、血便や貧血を引き起こしていたことがわかりました。
この腸を切除したのちに閉腹し、手術を終了しました。
手術後の経過は良好で手術を行なった8日後には、手術前に11.8%だった貧血を表す指標のPCV(正常値 37.3〜61.7%)が35.4%まで上昇していました。
退院後は元気を取り戻し、以前のようにご飯をしっかり食べれるようになりました。
抜糸時の写真です。元気になってよかったね!
まとめ
犬の腸の腫瘍には良性、悪性など様々なものがありますが、今回の症例のように良性でも命に関わる症状が出てしまうことがあります。
腸の腫瘍は良性悪性かかわらず、今回のような症状が出て大きな手術になってしまう前に治療を行うことが望ましいです。
普段から定期的に健康診断を行い、早期発見をするようにしましょう。
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