2024/06/17
犬に義眼手術はあるの?
「動物病院で眼球摘出しなければいけないと言われて怖い…」
「眼球摘出をしたら顔つきも全く変わってしまうのではないだろうか…」
そんなふうに考える犬の飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか?
実は犬にも義眼を入れる手術があり、眼球を摘出しても顔つきを元の状態に近いままにすることができます。
今回はそんな義眼手術について解説していきます。
今回の記事を通して、眼球摘出の必要に迫られている飼い主様に一つ選択肢が増えてくれると嬉しいです。
■目次
1.義眼手術とは?
2.義眼手術の適応となる病気
3.緑内障の義眼手術以外の選択肢
4.義眼手術って安全?
5.実際に義眼手術を行なった症例写真
6.緑内障かも?と思ったら
7.まとめ
1.義眼手術とは?
義眼手術は、強膜内シリコンインプラント挿入術(ISP)とも呼ばれます。
この手術は強膜と呼ばれる眼球を覆う膜から眼球を剥がし、その後強膜内の本来眼球があった位置にシリコンボールを埋め込む手術です。
眼球を摘出した後の見た目はショッキングだと感じる飼い主様も多く、見た目のインパクトを和らげるために用いられます。
2.義眼手術の適応となる病気
義眼手術の適応となる病気は、主に緑内障と呼ばれる病気です。
緑内障は、眼房水と呼ばれる液体が眼の中に過剰に溜まることで眼の中の圧力(眼圧)が上がる病気です。
緑内障は
- ・続発性緑内障:主に様々な眼の病気が原因となる
・原発性緑内障:柴犬、ビーグル、チワワなど多くの品種で遺伝的に起こりやすい
緑内障はかなりの不快感や強い痛みを伴うほか、悪化すると眼の神経を圧迫し失明することもあります。
3.緑内障の義眼手術以外の選択肢
症状が軽度の場合は、
- ・眼房水の排出させ眼圧を下げる薬
・眼房水の産生を抑える薬
の投与を行います。
症状が重いものの視力がある場合は、眼房水の排出をしやすくなるような手術を行います。
症状が進行し、視力の回復が困難な場合は眼球摘出、義眼手術、眼房水の産生を行う毛様体の破壊などの処置を行います。
4.義眼手術って安全?
義眼手術は全身麻酔下で行うため、もちろん100%安全とは言い切れませんが、他の病気がない限りは命を落とすリスクは低いです。
また、術後の合併症には角膜潰瘍やドライアイが見られることがあります。
角膜潰瘍は、その名の通り角膜がえぐれてしまう病気です。
放置すると角膜に穴が開いてしまうこともありますが、適切に治療を行えば、ほとんどの場合は完治する病気です。
ドライアイは正常に涙が作られなくなり、目が乾燥してしまう病気です。
目は乾燥し過ぎてしまうと傷がつくため、乾燥し過ぎないように点眼などの管理が必要となりますが、ドライアイが原因で命に関わるようなことはほぼないと考えられます。
よって、義眼手術のリスクはそのまま麻酔をかけるリスクと大差なく、比較的安全性の高い手術と考えることができます。
5.実際に義眼手術を行なった症例写真
ここからは実際に義眼手術を行なった症例の写真をご紹介いたします。
いかがでしょうか?
どの眼が義眼かわからない写真ばかりに見えますね。
ちなみにこの写真の犬たちは、左から順番に右眼、両眼、左眼が義眼となっています。
6.緑内障かも?と思ったら
緑内障は眼圧を測定することによって診断されます。
特に柴犬やビーグルなどの緑内障の好発犬種は定期的に眼圧を測定することが望ましいです。
また、緑内障を発症すると強い痛みを伴うため、眼をしょぼしょぼさせたり、眼を触ることを嫌がるようになります。
このような症状が見られた場合はすぐに動物病院に連れていくようにしましょう。
7.まとめ
今回は強膜内シリコンインプラント挿入術という義眼手術についてご紹介しました。
緑内障は眼球摘出を余儀なくされることがあることもあり、手術後はショッキングな見た目になってしまいます。
そんな時の選択肢の一つとして義眼手術を選択してみるのも良いのではないでしょうか。
当院までいつでもご相談ください。
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